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vol.32地震に強い家づくり

2024.11.29

ここ十数年の間、日本各地では予想をはるかに超える大規模な地震が発生しており、住宅における地震対策の在り方が見直されています。
建築基準法を満たすだけでなく、より長く住宅を、そこに住む人たちを守るためにも地震に備えた家づくりが重要です。
木造住宅での家づくりのなかで、耐震性が高い(地震に強い)ことがどれくらい重要なのか解説していきます。

地震対策の重要性

日本は、火山活動が活発な環太平洋変動帯に位置しています。
そのため、世界の0.25%という少ない国土しか持たない国ですが、全世界で起こるマグニチュード6以上の巨大地震は5回に1回が日本で起きています。
日本における有感地震(震度1以上)の回数は1年になんと1000~2000回と言われています。
平均すると1日当たり3~6回ほど。
南海トラフ地震や首都直下地震など近い未来に発生する可能性のある巨大地震についての予測もあることから、今のうちに地震対策をしておくことがとても重要です。

木造住宅の耐震性能

木造住宅は鉄筋やRCより柔らかく強度が劣るイメージがありますが、実は「地震の揺れを逃がしやすい」という特性があります。
建物の揺れは重いほど大きくなるため、高層ビルやマンションに比べて軽量な木造住宅の揺れは少なく、耐震性が劣っているということはありません。
耐震性の高い木造住宅をつくるためには、木材の性質を生かした設計・施工がたいせつです。

画像

建物の耐震性能ってなに?

平成12年以制定された「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」による、住宅性能表示のことです。
建物の耐震性能は主に建物の「強度(耐力)」「粘り強さ(靭性・変形能力)」で決まります。
建物の強度は鉄筋コンクリートなどの強い建材を使用したり、壁を厚くしたり、補強材を取り付けることによって強化可能です。
粘り強さは衝撃を吸収するような構造を取り入れたり、衝撃吸収材を利用したりすることによって向上します。

「耐震等級1・2・3」

耐震等級とは、人命と建物の両方を守れるかを基準にしたもので、平成12年以降制定された「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」による住宅性能表示のことです。
地震に対する建物の倒壊・損傷のしにくさを判断する目安として、等級1~3に分類し、等級の数字が大きいほど耐震性に優れているとされています。

図表

※「耐震基準」とは、地震による建物の安全性や人命の確保をするための最低基準です。
関東大震災の翌年1924年に初めて明文化されて以来、複数回にわたって見直しが行われてきました。
近年では、1995年の阪神・淡路大震災を受け、2000年に改正されています。
耐震基準は住宅の耐震性能を表す最低基準として、耐震等級の基盤になっています。 ひとつの基準として知っておきましょう。

耐震等級3をとるためには

耐震等級3を認定するには、第三者機関「登録住宅性能評価機関」に申請し、認定を受けなくてはなりません。
評価を受け認定された場合は、等級を証明する「住宅性能評価書」を取得できます。
住宅性能評価書には住宅の性能に関する情報が記載しており、等級も明確に知ることが可能ですが、コストがかかることや間取りの自由度が下がることなどの注意が必要です。
耐震等級を証明する評価書を取りたい方は、建物の重さや耐力壁の配置、柱の数など設計段階から検討する必要があるため、建築会社には必ず事前に相談しましょう。

耐震等級を検討するうえで知っておきたい特徴

耐震等級取得は必須ではない

耐震等級を含む、住宅性能表示制度は任意の制度のため、必ず取得するものではありません。
住宅性能表示制度に基づく、住宅性能評価書を取得していなくても、建築基準法を満たしていれば建物を建てることはできます。

等級は自分で決められる

住宅を建てる際は、お施主様が希望の耐震等級を設定できます。
しかし、どんな間取りでも決められるかと言ったらそうではありません。
地震に耐えられるような構造にするにはそれなりの間取りの制限があります。
より上を目指すかどうかは希望する予算や間取りなどと相談しながら決めましょう。

等級を獲得すると地震保険料の割引を受けられる

耐震等級を取得すると、地震保険に対して最大50%の割引を受けられます。
財務省が「保険金額1000万円あたり保健機関1年につき」地震保険の基本料率を公開していますので参考にしてください。
地震保険の基本料率(令和4年10月1日以降保険始期の地震保険契約) : 財務省

ただし、認定通知書、設計内容説明書など、その住宅が各耐震等級を保有していることを示す書類(住宅性能評価書等)の提出が必要です。詳しくは損害保険会社にお問合せ下さい。

耐震・制振・免震

耐震性の高い木造住宅を建てるためには、耐震以外に制振と免震についても考慮する必要があります。

耐震とは-

柱や梁などを強化して地震の揺れに耐えて倒壊を防ぐ構造で、建築基準法によって一定の基準が義務化されています。

制振とは-

振動を吸収する装置を設置し、地震による揺れを抑えて建物の損壊を防ぐもの。
制振は【振動を制する】ことを指し、地震のみではなく振動すべてを抑えるという意味でつかわれるので、地震のほかに列車やトラックが通過する際の揺れも軽減できるため、高価であるにもかかわらず積極的な導入が進んでいます。
建物の変形を防ぐ働きもあり、高層ビルや橋に使用されることが多い構造です。

免震とは-

建物と地中の基礎部分の間に設けた装置によって、揺れと建物を切り離すことで地震の揺れが直接伝わらないようにする構造で、建物と地面の間に揺れを吸収する装置を設置し、建物の揺れを最小限に抑えます。
免震装置は後付けができないため、興味のある方は事前に導入を検討するようにしましょう。

図表

耐震構造・制振構造・免震構造のメリットデメリット

建物を守るという点で、共通の目的をもった3つの構造ですが、それぞれ異なる定義があることをご理解頂けたかと思います。
戸建住宅を建てる際は、メリットデメリットも十分に理解しておくことが重要でしょう。

図表

耐震性が高まる設計のポイント

地震で壊れやすい家とは、柱・梁・筋交いから構成される耐力壁が少なかったり、配置のバランスが悪かったりすると地震に弱い家になります。
どんなに家の構造が強くても、土地の地盤に問題があれば地震に強い家にはなりません。
耐震性の高い建物を建てるために大切なのは「全体のバランス」です。
まず耐震性に影響する5つのポイントを説明します。

1.建物は軽いほど耐震性が高い

建物や屋根の重量が軽いほど耐震性は高まります。
特に屋根は金属屋根が一番軽く、次にスレート屋根、一番重いのが瓦屋根です。

2.耐力壁が多いほど耐震性が高い

「耐力壁」が多いほど耐震性は高くなります。
耐力壁とは、構造用面材や筋交いが入れられた壁のことです。
耐力壁の場所には基本的に大きな窓が設置できず、位置によって開口部の大きさなどに制限を及ぼします。
大きな開口のサッシや壁で仕切らない大空間なリビングが希望の方は、構造上問題がないかよく検討する必要があります。

3.耐力壁や金物をバランスよく配置

耐力壁は、建物のどこに配置するかだけでなく、どこかに耐力壁が偏ることなく、
かつ建物のX方向・Y方向(建物を上から見た時の縦横の方向)ともにバランスよく配置することがとても大切です。

4.屋根や床の耐震性能(水平構面)が高い

耐震性のことを考えるとき、垂直方向の柱の壁の強度を高める事ばかりが注目されがちですが、あわせて水平方向の屋根や床の剛性(硬さ)を高めることも重要です。
例えば、段ボールの側面だけ丈夫でも、フタや底がしっかりしていないと横から押したらつぶれてしまいます。
それは建物も同じです。

5.地盤が強い土地

地域によって不同沈下が起こりやすい地盤があります。
地盤調査を行い、軟弱地盤の場合はしっかり対策をたてることをおすすめします。

図表

最後に

耐震等級1のお家に比べ、耐震等級3のお家は当然費用も多くかかります。
最終的には「人それぞれの考え方」になると思いますが、自分たちにとって本当に必要かどうか、そのメリットや注意点、リスクを吟味したうえで何を優先して選ぶのかよく相談し、バランスの取れたお家づくりをしてみてはいかがでしょうか。

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