COLUMN住活のお悩み解決コラム
vol.33高気密住宅の負圧問題
家づくりを考えている方は、「高気密・高断熱住宅」という言葉を目にしたことがあると思います。
簡単に言うと「夏は涼しく冬は暖かい」が実現できる住宅のことですが、単に断熱等級が高くて気密の数字が良ければOKという問題ではありません。
空気の流れの原理を知って、計画的におうち作りを進めていくためにいくつかの要点を押さえていきましょう。
過去に断熱等級が良い家の特徴をまとめた記事がありますので、興味がある方はご覧ください。
vol.30 断熱等級とは?Ua値って? - COLUMN 住活のお悩み解決コラム
高気密住宅とは
そもそも高気密住宅とは、家の隙間が少ない住宅のことを言います。
「高断熱住宅」は断熱がしっかり入っていて暖かい家ということですが、「高気密住宅」は、家の隙間をなくして寒い風が入らなくさせようという考え方のお家です。
過去に高性能住宅に必要な気密性と換気についてまとめた記事がありますので、こちらもご覧ください。
vol.27 気密と換気 - TREND 家づくりのトレンド情報
気密性が良いお家の判断の仕方
そのお家の意図しない家の隙間がどれくらいあるのか調べる方法は、「気密測定」をして数値を測ります。
お風呂やキッチンの換気扇などの計画された開口部ではなく、サッシや玄関扉の間など施工中にできてしまった小さな開口部が家全体にどれくらいあるのか、このような専用の機械を使って調べます。

家の中にどれくらいの隙間があるのかを表す単位を「C値」といいます。
隙間面積(c㎡)÷建物の延べ床(㎡)=C値(c㎡/㎡)
という計算式で求められます。
数字が小さいほど良いのですが、一般的に、1.0c㎡/㎡以下であれば高気密住宅だと言われています。
実際に、アユムホームの物件で気密測定をした際のデータです。

上記写真の場合、33c㎡(総相当隙間面積)÷166.46(延べ床面積)=0.198(C値)

こちらは18c㎡(総相当隙間面積)÷133.49(延べ床面積)=0.135(C値)
アユムホームでは実際のお施主様のお家でC値0.12という数値の実績があります。
一般的に良いとされている数値の物件の約9倍の気密性の良さということがお分かりいただけるかと思います。
設計値だけでは測れない実質的な断熱性能を担保するには、気密性を高くする必要があります。
断熱性能は断熱材の性能と厚みで計算すれば理論値は数値で出てくるのですが、気密性能は気密測定をしないとわからないものなので、実際に測定をしてほしいときは建築会社に依頼するのをお勧めします。
気密性を上げすぎるとどうなる?
例えばC値0.8というのは、1㎡あたり0.8cmの穴が空いていることを示します。
床面積約100㎡(約30坪)の家であれば、80c㎡(はがき約半分の大きさ)の外部とつながった穴が空いていることになります。
気密性を高くしているのは、冷暖房効果を妨げる外気の流入をなるべくなくし、快適で経済的な室内環境を実現するためですが、外からの空気をシャットアウトしてしまうと室内では負圧という現象が起きます。
この場合でいう負圧とは、建物内の空気が引っ張られる圧力がかかることを言います。(ストローでジュースが飲めるのは、ストロー内に空気の引っ張り【=負圧】が生じるからです。)
負圧になった状態の建物は、玄関ドアが室内側に引っ張られて、開きにくくなったりすることがあります。
負圧に対して何も講じていない家であればそうなりますが、重要なのはそれをどのように緩和し、快適な住環境が得られるためにどのような家づくりをしているかというところがたいせつです。
負圧って?
建物内と建物外の気圧を比較したときに、内部の気圧が低くなっている状態のことを言います。
空気は気圧の高いところから低いところに向かって流れるので、建物を換気するために排気を行い続けると内部の気圧が低下し、負圧が発生します。
負圧になると、隙間風が生じたり、扉が急に閉まったりしてしまうことがあります。
何も対策をしないと起こる副作用のようなものですが、建物に対して給気を増やすなどしっかり対策することでそのような副作用は緩和され、快適な住環境が生まれます。

負圧問題はしっかり対策することがたいせつ
建物にかかわる主な排気量
① レンジフードの排気量 弱200~250㎥/h、中300~350㎥/h、強500㎥/h
② 浴室換気扇の排気量 100㎥/h
③ ガス式衣類乾燥機の排気量 200~250㎥/h
④ 第一種換気システムの排気量 150㎥/h
上記の数字から、
●キッチンのレンジフードを回しているときに一番負圧問題が起きやすいことが分かります。
ですので、キッチンレンジフードを高気密住宅用の同時給排タイプに変えることをお勧めします。

出典:同時給排レンジフードはどういったフードですか。 - レンジフード - Panasonic
●ガスコンロの場合は不燃物などで空気が悪くなるので、中運転をしましょう。
浴室換気扇の排気量はそれほど強くなく、負圧の原因となることは少ないですので、回しっぱなしでも問題ありません。
むしろ、カビの原因である湿気を逃がすために常に回しておくのがお勧めです。
●第一種換気システムは、外部から取り入れた空気とほぼ同じ量だけ外部に排出するシステムなので、空気の引っ張りが偏りにくくなります。
また、換気風量や換気経路もきちんと設計するため、ドアが開きにくいなどの副作用はありません。

出典:社団法人北海道住宅リフォームセンター
とはいえ上記の対策をしても、残念ながら負圧問題を100パーセント解決できるわけではありません。
どれだけ対策をしても多少は部屋の中が負圧になりますし、ドアも少しは重くなります。
完璧になくすことは不可能ですが、できる対策はしっかりやっていくことがたいせつです。
最後に
ご説明した通り、高気密住宅にはいくつかの弱点があります。
しかし、しっかり要点を押さえて計画的に対処していけば快適で暮らしやすく、素晴らしい住宅になります。
断熱性が良い家にするには、気密性もセットで考えることが必要不可欠であることが分かりますね。
何十年も住むお家ですので、メンテナンスをしっかり行いながら健康的で気持ちのいい生活を送りませんか?
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